2011年7月27日放射線専門家の佐々木研一さん(元立教大学理学部教授)に依頼して、
さいたま市内を調査しました。
さいたま市全域に大気中の放射性物質が雨などで降下し汚染されていること、
身近に高濃度の場所が確認されました。
しかし、さいたま市の調査(7月7日~26日)では
「各地点の空間放射線量は1時間あたり0.04~0.11マイクロシーベルトで、
年間被ばく予測線量を試算した結果は、法令上の一般公衆の線量限度(年間1ミリシーベルト)を下回り安全だ」
と言っています。本当に安全と言えるのでしょうか?
今回の計測調査結果の一部および佐々木研一さんのコメントを紹介します。
調査結果まとめ;斎藤紀代美さん(子どもの人権埼玉ネット)
| 区 | 測定場所 | 測定地点 | 測定値 (マイクロシーベルト/h) | 年間被曝 予測線量 |
|
|
|
| 地上10cm | 50cm | 1m | ミリシーベルト/年 |
1 | 浦和 | T幼稚園 | 園庭(土) | 0.10 |
|
|
|
|
|
| すべり台下端 | 0.14 |
|
|
|
|
|
| 砂場 | 0.08 |
| |
|
2 | 緑 | 農業者トレーニングセンター | 駐車場植込み下 | 0.38 |
|
| 2.00 |
|
|
| 緑の広場芝(中央)* | 0.17 |
| 0.15 |
|
|
|
| 広場東側道路L字側溝 | 0.22 |
|
| 1.16 |
3 | 緑 | 埼玉スタジアム2002 | 公園芝(端) |
|
| 0.18 |
|
|
|
| 公園芝(中央) | 0.14 |
| 0.13 |
|
|
|
| スタジアム正面通路側溝 | 0.37 |
|
| 1.95 |
|
|
| 正面駐車場(南端)低部 | 0.50 |
|
| 2.63 |
4 | 大宮 | 大宮第三公園 | 広場芝(中央) | 0.16 |
| 0.16 |
|
|
|
| 駐車場端 | 0.17 |
|
|
|
|
|
| 沼(ビオトープ) | 0.15 |
|
|
|
5 | 浦和 | 交差点(17号北浦和駅入口) | L字側溝 | 0.17 |
|
|
|
|
| 北浦和公園 | 落ち葉 | 0.16 |
|
|
|
|
|
| 児童公園山の下 | 0.11 |
|
|
|
|
|
| すべり台下端 | 0.16 |
|
|
|
|
|
| 美術館前通路脇低部 | 0.20 |
|
| 1.05 |
6 | 浦和 | 浦和競馬場 | 場内芝(中央) | 0.11 | 0.11 | 0.09 |
|
7 | 浦和 | 調神社 | 玉砂利(東側) | 0.20 |
|
| 1.05 |
| | 調公園 | 中央広場側溝 | 0.17 |
|
|
|
|
|
| 球技用広場(児童公園東) | 0.26 |
|
| 1.37 |
8 | 浦和 | 個人宅 | ひさし雨樋下染み込み砂地 | 0.48 |
|
| 2.52 |
|
|
| 庭 | 0.14 |
|
|
|
|
|
| 室内フローリング床 | 0.08 |
|
|
|
9 | 浦和 | 浦和駅西口 | JR看板下低部 | 0.19 |
|
| 1.00 |
.測定方法 |
|
|
|
|
|
(1)測定器 Inspector(USA製)検出窓45mmφ、2ミリの遮蔽アルミ板使用(β線カットのため) |
(2)測定者 佐々木研一(元立教大学理学部教授) |
(3)測定値 測定した平均値(中央値) 今回使用した測定器は値がやや低めに出る(佐々木氏談) |
(4)測定場所 さいたま市内 対象物から 10cm、50cm、1mの距離から測定 |
|
(5)被曝予想線量はさいたま市の測定結果に使用されている計算方式に従った |
|
|
年間被曝予測線量(mSv/年)=測定値(μSv/h)x(8時間+0.4x16時間)x365日/1000 |
|
* 農業者トレーニングセンター・緑の広場・芝生中央
さいたま市測定値 0.08μs/h
【佐々木研一さんのコメント】
・今回の測定ではいわゆるホットスポットはありませんでした。(他地域と同様の一般的傾向です)。
・舗装面と裸地・草地では舗装面のほうが汚染は低く,
とくに自動車で走行する道路中央部にはかなり低い場所がありました。
これは舗装面では浸み込みが少なく,雨等で洗い流されるからと考えられます。
・現在身の回りにある原発事故由来の放射性物質のほとんどは
セシウム137(半減期約30年)と134(半減期約2年)であり,
それらがいったん土壌粒子などと結合するとその粒子と行動を共にするので,
土壌粒子などが洗い流されればその移動先で希釈され,または逆にそこに集積されます。
洗い流されなければ何10年単位でそこにとどまります。
(セシウムは土の中では上下左右に移動しにくい元素)
・舗装道路などで大量の雨水に混じって流されれば薄められて遠くへ移動し,
少量の雨水で流されれば路肩や側溝・L字溝などに集積します。
・舗装道路の路肩の,とくに側溝の集水升付近に溜まった土などは
汚染の度合いが高い可能性があり(触れてはいけない),
乾けば風で舞い上がり,吸引の可能性があります。
・裸地・草地でも同様のことが起きますが,土への浸み込みが多い分,
移動しにくく,多量の雨が降らない限り, その場所に長くとどまることになります。
・砂場は雨の最初の浸み込みがとくに速く,深く浸入するので,
そのまま表面から測定すると一見汚染が低いと勘違いしますが,
どこかに止まっており,遊ぶ際に掘り返せば表面に出るので要注意です。
舞い上がる細かい砂塵の吸引にも注意。
・屋根に降った汚染物質は雨と共に雨樋を流れ落ちます。
下水につながっていない雨樋の下の砂利や土は汚染度が高いので気をつけてください。
・今回の測定点はホットスポット多発地帯からは外れていたようですが,
道路の側溝や集水升付近,それから舗装した駐車場の低い水のたまる場所,
雨どいの下,庭の低い部分はやや高い汚染が見られました。
皆さんの身近でも,該当するところはご注意ください。
・庭で土いじりをする場合は素手で作業しないほうがよいでしょう。
ゴム手袋は有効です。埃を吸い込まないよう,マスクをするとか,
雨上がりを選ぶのもよいでしょう。
・放射線の影響は被曝量に比例する(被曝は少なければ少ないほどよい)というのが,
安全サイドに立つ考え方なので,自然放射線といえども避けられるものは避けたほうがよいのです。
自然の紫外線被曝による日焼けを避ける皮膚がん予防と同じです。
健康診断や治療の被曝はリスク以上のメリットを期待する損得勘定の上に成り立つ被曝です。
・思い詰めることはよくありませんが,
被曝しても得にならない被曝をちょっとした工夫で避けることができるのであれば当然避けるべきです。
このコメントが身の回りの汚染を理解し,被曝を避けるためのお役に立てば幸いです。
以上
西内良子(5年後10年後こどもたちが健やかに育つ会 さいたま)
斎藤紀代美(子どもの人権埼玉ネット)、斎藤 宏(浦和青年の家跡地利用を考える会)
連絡先 斎藤 宏 048-822-6830, a_to_-chi@jcom.home.ne.jp